語録集
故宮澤秀巖先生が遺したお弟子様への師事語録の一部。
美術品、芸術品の定義。書の次元の完成。現代日本において失われた教養への警鐘など、
秀巖先生の書に対する探究・究明の姿勢が窺えます。
「書とは?の知識」
定義
二次元の文字は解り易い(書き方の段階)
三次元の書は綺麗である(お習字の段階)
四次元の書は生き生きしている(書技の段階)
五次元の書は生きている(極真哲理の段階)
文字は二次元、書は三次元、四次元の書にしてはじめて美術品と言えるものであって、五次元の書からは宙を飛ぶ。即ち五次元の書は気を導入する事に依って始めて引き興す事が出来るもので、此の書には自ら行動を開始し、光をはなち宇宙間を浮動するカを持つ。
六次元の書は、更に統一せる精神をもって之に入魂すれば書は一種の生命体を発生し、特種の現象を興すカを発揮する。
圧力も筆勢も考慮せず、只、空間処理のみ追究し形だけを追う。之が二次元の文字の学び方。三次元からの学び方は、筆の持ち方、筆勢、筆圧、リズム、筆法、命毛の位置、墨磨の呼吸等々の勉強。そして之を頭で理解し、自分の体に自分自身が自ら教え込む。此処からがお習字の段階である。
一般の人の書に対する理解度は二次元の世界しか解らない。かろうじて文字の外形と表面が見える程度のものである。其の気になって勉強した人でも三次元の世界が解るには最低十年から十五年の歳月を要する。万人を感動させ、心に訴え、心を打つ作品を創った時始めて美術品となる。美術品とは時間、空間の処理が為されたもの。芸術品とは更に其の上をゆくものを言う。