〈釈文〉赤壁賦(せきへきのふ) 壬戌(じんじゅつ)の秋、七月既望(きぼう)、蘇子(そし)客と舟を泛(うか)べ、赤壁(せきへき)の下(もと)に遊ぶ。清風(せいふう)徐(おもむ)ろに来たり、水波(すいは)興(おこ)らず。酒を挙(あ)げて客に属(すす)め、明月の詩を誦(しょう)し、窈窕(ようちょう)の章(しょう)を歌う。少焉(しばらく)にして月東山(とうざん)の上に出(い)で、斗牛(とぎゅう)の間に徘回す。白露(はくろ)江(こう)に横たわり、水光(すいこう)天に接す。一葦(いちい)如(ゆ)く所(ところ)を縦(ほしいまま)にし、万頃(ばんけい)の茫然(ぼうぜん)たるを凌(しの)ぐ。
〈大意〉壬戌の秋七月十六日、蘇子は客とともに船を浮かべて、赤壁の下に遊んだ。清風がゆるやかに吹き、水面には波が立たない。酒を取って客に進め、明月の詩を誦し、窈窕の章を歌った。しばらくして月が東山の上に出、斗牛の間を徘徊した。長江の流れが白露のように光り、その光が天に接している。船は葦のように流れに任せ、はるばると広がる水面をわたっていく。(元豊5(1082)年、黄州に流されてから3年目の秋、蘇軾が三国志の古戦場として名高い赤壁に遊んだ際に作った「赤壁の賦」の一節。賦とは韻文ではないが一定の抑揚をもった朗誦文学である。)
- 〈落款〉一九九五年暮秀巖書
- 〈出典〉蘇軾(蘇東坡)「前赤壁賦」(中国・宋代)
- 〈製作年〉平成7(1995)年
- 〈出品書展〉平成10(1998)年10月第27回萠翠会秀叢展
- 〈書体〉行草書
- 〈表具形態〉巻子