宮澤秀巖

語録集「現今の書壇」

語録集

故宮澤秀巖先生が遺したお弟子様への師事語録の一部。
美術品、芸術品の定義。書の次元の完成。現代日本において失われた教養への警鐘など、
秀巖先生の書に対する探究・究明の姿勢が窺えます。

「現今の書壇」

現在の書の世界、其れは書技の競い、名声の獲得に有る。だから書写で有り、お習字と云う。本来記録の為、実用の為に始って絵文字から現代の文字に至った。六書は如何に人の心を正確に伝えむかと進展発展した。文字の構成には時代性と社会性と有る。

其の長い歴史の中に人間の心と生活が滲み出され、現在の文字に至り、実用から高度な芸術の世界に迄発展させた。文字を基とするも、書道は書き方でも無ければ書写でもお習字でも無い。人間本来の姿、無我身への求道、此処に技を離れた芸術の世界が生まれる。書道は自己の完成の為に学び行ずるもので有って、技と名声の為に学ぶものでは無い。練習さえすれば誰でも上達するもので、技が上手に成ったからと言って偉く成ったのでは無い。学びを通して覚らむとする処に学びの価値が有る。之が書道で有る。

更に哲と覚を積み進めば、芸術の世界、物理を越えた世界、六次元の世界に達する。

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